中小企業の意匠と商標の保護

 2015年夏に大問題を引き起こした2020年東京オリンピックエンブレムの白紙撤回についてはまだご記憶に新しいと思います。 この事件は根本的な問題を「白紙撤回」と「再公募」というイベントでうやむやにされてしまった感がぬぐえませんが、問題の根底には『極めて影響の大きなデザインの選定と公表』というプロセスの手順を間違えたからと考えるのが多くのデザイン業務経験者の考えです。

<2020年夏季オリンピック・パラリンピックのエンブレム>(ウィキペディア)
https://ja.wikipedia.org/wiki/2020%E5%B9%B4%E5%A4%8F%E5%AD%A3%E3%82%AA%E3%83%AA%E3%83%B3%E3%83%94%E3%83%83%E3%82%AF%E3%83%BB%E3%83%91%E3%83%A9%E3%83%AA%E3%83%B3%E3%83%94%E3%83%83%E3%82%AF%E3%81%AE%E3%82%A8%E3%83%B3%E3%83%96%E3%83%AC%E3%83%A0

 オリンピックで全世界に情報発信してゆく役割を持たせるシンボルデザインの公募費用は採用者への謝礼が100万円という金額であり、そうした大きな役割に見合うとは到底思えませんが(採用後に発生するはずだった多種のデザイン発注物の方が狙いという見方ももちろんありますが)、それよりも、採用前や公開前の類似意匠のリサーチをしっかりやらなかったのだろうと思わされる点が誠に痛い話でした。

 普通に考えても大きな企業のシンボルやブランドなどのマークは意匠登録を行いますが、その過程で使用する地域や業種を中心に意匠登録前の類似調査をやらねばなりません。それらを着実にやっていても国内において多種の意匠類似事件が起きています。この手の裁判になると、まず先手登録済みの方の勝ちですし、それらの営業や売り上げが大きなものほど損害賠償も大きなものとなります。

 で、地方ではどうかと言いますと・・・

 多くの企業や店舗様においてシンボルやロゴタイプの商標登録はされていないのが現実ですね。これらをきちんと登録しようとすると、1懸案あたり20万円~50万円程度費用が掛ります。その費用は上記の様な必要なリサーチや書式に従った公文書の提出など弁理士への費用や登録時の費用が更に6万~程度掛ります。

 この、商標登録をしないで、万一他社、他店舗などから商標や意匠の類似を指摘されたらどうなるでしょうか?

 未登録な場合は、もうそのシンボルや意匠を廃棄するしか手がないことがほとんどですね。公に認証された相手と裁判をして勝てる見込みはありません。相手に訴訟され損害賠償を請求される前にしっぽを丸めるしか無くなります。それほど企業のシンボルや意匠は大切と言うことですね。事業が伸びていて、営業所や営業エリアが大きくなるほどに、こうした心配も大きくなって行きます。

 ご心配なら是非一度シンボルや意匠の類似調査、登録への検討などを考えた方が良いかもしれませんね。慣れ親しんだシンボルや意匠を失うなら、類似を突かれないようなデザインリニュアルを行ったり、新たなデザインへ発展させることも可能ですね。

 当サクセスでも、栃木県デザイン協会や東京の弁理士さんと連携してこうした作業を行うことも可能です。弁理士とデザイナーが緊密に連携することで、意匠や商標登録がスムーズに時間も効率的に進めることが出来ます。必要な機会があれば是非ご相談ください。